認知症になると遺言書はもう作成できないのでしょうか




認知症になってしまった後はもう遺言書を遺すことはできないのでしょうか?
とてもご不安な状況でございますね…。
神奈川県の医師や葛飾区の老人ホームで勤務されている方から
医療の発達で寿命をかなり延ばすことはできても、健康寿命はそれに比例して延ばせていない
との認知症患者の増加を訴える現場の声もございます…。

平成26年の厚生労働省の資料によりますと、男性の平均寿命は約80歳で健康寿命は約71歳、その差は9年。
女性の平均寿命は約86歳で健康寿命は約74歳、その差は12年。
自立した生活ができない期間が男性は9年、女性は12年もあると言われております。
このことから、遺言書の早期作成が求められます。

認知症が発症しますと、作成条件も厳しくなり、遺言書の有効性が争われる可能性も出てまいります…。
発症後に弊所へのご相談時には代替案(家族信託)の検討も含めて取り組ませていただきます。
以下に参考条文と、弁護士の見解を掲載させていただきますので、ご参考くださいませ。



【参考】 民法
第973条(成年後見人の遺言)
第1項
成年後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
第2項
遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。以下省略。

この民法第973条の解釈は個々の弁護士の先生方でも見解が異なります。
見解が異なる、ということは確実性は保証できない、ということでございます…。

【見解】
A「認知症のご家族の調子が良いときに、医師二人の判断してもらうが、その遺言が有効かどうかの紛争を完全に排除できるわけではない」
認知症の方が遺言書を遺しても、その有効性について少し否定的な見解でございます。

B「医師の診断書があれば、後日紛争になっても有効性は補強できるかとは思います。認知症といっても程度があるので、認知症イコール無能力、にもならないでしょう。」
認知症でも、診断書があれば、遺言書は作成可能で、有効性も認められる可能性があるという見解でございます。