検認とはどういうものか

 




検認とは何か


検認とは一体どのようなものなのでしょうか…?

検認とは…、残されたご家族(相続人)に遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の形状や状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きでございます。

この手続きは家庭裁判所(東京都でしたら、霞が関にある東京家庭裁判所です)で行います。
検認申し立てで1回行き、後日検認期日が決まったら再度行き…、計2回も家庭裁判所に行かなくてはいけません。
しかも、裁判所は平日のみしか営業しておりません
勤労者は仕事を休んだり、早退しなくてはいけません。
これは大変ですよね…。

そして、申し立てには、遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改正原戸籍)、相続人全員の戸籍謄本が必要でございます。
シンプルな相続でしたら2,3枚の戸籍謄本で済みますが、複雑な相続ですと、20枚以上必要になることがございます。
これを残されたご家族が、故人の凍結された銀行口座などから相続手続きのために行うのですから、本当に大変です…。

よろしければ、以下の「検認手続きの流れです」と「検認の注意点です」もご参考ください。



検認手続きの5つの流れ

検認手続きは、大きく5つ流れがございます。

1 検認申し立て
検認をなさるには、先に申し上げましたように、家庭裁判所に申し立てをする必要がございます。
申し立てを行うことができる方は以下の方です。
・遺言書の保管者
・遺言書を発見した相続人
そして、申し立てには必要な書類がございます。
・検認申立書
・遺言者の出生時から死亡時までの戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・その他審理に必要な追加資料

2 検認期日通知
申し立てを受けた家庭裁判所は、検認を行う日である「検認期日」を相続人全員に通知いたします。
一般的には、申し立てより2週間から1ヶ月程度経ったあたりが実施日になります。

3 検認実施 通知された期日に、検認が行われます。
この検認には 申立人の立会いが必要 です。
では…、通知がきた他の相続人の立会いは必要なのでしょうか…?
通知がきた他の相続人は、この検認実施日に出席しても、出席しなくても、問題ございません。
また、検認日には、申立人は
・遺言書
・申立人の印鑑
その他指示を受けたものがあれば、その指示を受けた物を必ず持参しましょう。
実際の検認では、相続人立会いのもとで遺言書を開封いたします。
もちろん、ここまでで遺言書を勝手に開封してはいけません。
5万円以下の過料に処されてしまいます(民法第1005条)。
また、遺言書の内容について、裁判官から質問もされますので、それに答えていきましょう。

4 検認済証明書の発行
検認が終わると、家庭裁判所で検認済証明書が発行されます。
遺言に従って、銀行などの金融機関で手続きをされたり、相続の登記をされるときに、この検認済証明書が必要になります。
これがないと、銀行員や登記官は手続きを受け付けれくれませんので注意しましょう。
発行には1部150円と印鑑が必要です。

5 検認済通知
家庭裁判所から立会いをしなかった相続人に対して 、検認済通知書が送付されます。
これによって検認が完了した旨を相続人全員が確認できます。



注意点

検認を受ける前に開封しないように
公正証書遺言以外の遺言書を発見しましたら、そのままの状態で検認を受けなければなりません。
封がされているものは開けずに持っていく必要がございます。
発見したとき…、
「あ…、遺言書だ。 中身は何て書いてあるんだろう。 ちょっとだけ確認してみよう。」
という心理がきっと働きます。
うっかり開封しないよう、本当にご注意ください!
うっかり開封してしまっても、検認は受けなければなりません。
万が一、検認前に開封してしまうと、前述しましたが、5万円の過料に処されてしまいます(民法第1005条)。
うっかり開封して、払いたくない過料を支払った場合でも…、その遺言書が無効となるわけではございません
そこはご安心ください。

尚、封印とは、封に押印されていたり、証紙が貼られているもののことを指します。
単に糊付けされているだけでは、封印にはなりません

検認を受けずに遺言を執行しないように
実際に遺言に従って遺産の分配をすることを「遺言の執行」といいますが、遺言書の検認を受けずに遺言を執行してはいけません
検認されていない遺言書を持って行っても、「検認済証明書」がございませんので、銀行員や登記官は手続きをしてくれません。
仮に、検認を受けずに遺言を執行した場合も、5万円以下の過料に処されてしまいます(民法第1005条)。

遺言書の偽造・隠匿をしないように
遺言書を偽造・隠匿・廃棄する行為は禁物です。
これらの行為をすると、「相続欠格者」として扱われ、 相続権がなくなってしまいます(民法第891条第5号)。
公正証書遺言以外の遺言書を発見したら、そのまま裁判所に持って行きましょう。

相続を知られたくない方がいらっしゃる場合は要注意!
検認手続きをすると、相続人全員に通知が行く旨を先ほどお話しました。
相続人の中で、絶対金銭問題で揉めるトラブルメーカーがいらっしゃる場合…、この方にも検認の通知が届くことになり、遺産の分割がこれから行われていくことがわかってしまいます。
きっと絡んでくるでしょう…。
故人も、絶対そのトラブルメーカーの相続人に相続をさせたくないだけでなく、相続を知られたくない場合は、検認手続きがある自筆証書遺言と秘密証書遺言はお勧めできません…。
公正証書遺言でしたら、検認が不要ですので、秘密裏に相続を終わらせることができます。
ですが…、いつか故人が亡くなっていることを後々そのトラブルメーカーが知った場合…、秘密にされていたことを本当に恨むことにもなります。
遺留分侵害額請求をしてくるのであれば…、最低限の配分量は持って行かれることも考慮する必要が出てきます。
このような方が身内にいらっしゃっても、筋を通して知らせた方がいいのか…、 家族問題は本当に法律だけ解決できるほど単純ではないことが思い知らされます…。